制度開始から1年が経過し、第3回の申請校数はこれまでで最多となりました。
一方で認定率は30%と第1回と同水準にとどまり、告示校の累計認定は19校にとどまっています。
このペースでは、2029年春までに全告示校が認定を受けるのは難しい状況です。
一方、新規設立校の認定率は41%と高水準を維持しており、制度理解や準備体制の差が結果に表れました。
本稿では、第3回の結果をもとに全体傾向・学校別の特徴・今後の審査の焦点を整理します。
数字で見る第3回認定申請の結果
| 区分 | 第1回 | 第2回 | 第3回 | 傾向・コメント |
|---|---|---|---|---|
| 全体認定率 | 31% | 40% | 31% | 申請数は最多だが、認定率は横ばい。 |
| 告示校認定率 | 35% | 31% | 21% | 申請数増も認定率は過去最低。 |
| その他(主に新規設立校)認定率 | 29% | 44% | 41% | 告示校に比較して高水準。 |
| 取下げ率 | 50% | 60% | 69% | 第2回、第3回継続審査校なし |
| 累計認定校数 | 22校 | 41校 | 64校 | |
| うち告示校 | 7校 | 12校 | 19校 | 現状では全告示校の認定完了は非現実的なペース。 |
全体傾向 ― 認定率は第1回と同水準の30%に低下
第3回の認定率は全体で30%と、第1回と同水準まで戻りました。
申請数は過去最多となり、制度が定着しつつあることを示しています。
一方で、準備や体制にばらつきが見られ、全体としての認定率は横ばいにとどまりました。
また、取下げ率は第1回の51%から第3回では69%へ上昇。
要件未達の申請が増えていることがわかります。
制度の浸透とともに申請行動が広がる一方、結果は依然として厳しく、
今後は「申請件数」ではなく「申請の質」がより問われる段階に入っています。
告示校の動き ― 申請は最多、認定率は過去最低
第3回では、法務省告示校の申請数が過去最多となりました。
2029年春の経過措置終了を見据え、「早めに申請しておこう」という動きが広がった結果です。
一方で、認定率は過去最低に下がり、準備不足のまま申請に踏み切った学校が多かったことがうかがえます。
つまり第3回は、行動の年であり、選別の年でした。
申請件数の増加は制度浸透の証ですが、結果は「理解と準備の差」が明確に出た回。
次回以降は、スケジュールよりも教育課程・教員体制・財務基盤の整合性を重視した“質の準備”が求められます。
新規設立校の傾向 ― 高い認定率と制度順応のしやすさ
第3回では、法務省告示校とは対照的に、新規設立校の認定率が41%と高い水準を示しました。
全体平均の30%を上回る結果であり、制度が浸透する中で一定の成果を上げた学校が増えていることが分かります。
新規設立校は、既存の運営体制や教員配置に縛られず、制度の要件を前提に一から学校を設計できる点が特徴です。
教育課程や教員体制を最初から基準に沿って構築できるため、結果的に認定基準を満たしやすい構造となりました。
この「制度に順応しやすい環境」が、認定率の高さにつながったと考えられます。
また、新規設立校の場合、運営経験のない設置者が手続きを一から進めるケースが多く、その過程で外部の専門家や申請支援を活用した事例も一定数あった可能性が考えられます。
いずれにしても、制度を正確に理解し、要件を一貫して整えた学校が成果を上げているという点は共通しており、この傾向は、制度が「形式的な書類審査」から「教育体制全体の整合性評価」へと移行しつつあることを示しています。
学校規模別の傾向 ― 小規模校は体制課題、大規模校はマネジメント課題
全体を通してみると、学校の規模によって課題の傾向が異なることが分かります。
小規模校では教員体制や経営基盤の安定化に関する指摘が多く、大規模校では学生支援や教員マネジメントに関する指摘が目立ちました。
小規模校では、主任教員の兼務や本務教員への負担集中が課題として挙げられました。
少人数で教育・運営・学生支援を同時に担う体制では、教員一人ひとりの業務負担が大きく、教育の安定性に影響が出やすいと考えられます。
また、財務面では借入金への依存や経営基盤の脆弱さが見られ、中長期的な経営計画の見直しが求められるケースもあります。
一方、大規模校では、学生数の多さに伴うマネジメントの難しさが課題として浮かび上がりました。
非常勤教員が多い場合、教育内容や評価方法が統一されにくく、学生一人ひとりの学習状況や生活面のサポートが行き届かないケースも見られます。
また、複数コースを設ける学校では、各コースの目的や対象が不明確になりやすい傾向もありました。
こうした傾向から、規模の大小にかかわらず、学校運営における「体制のバランス」が教育の質に直結していることが分かります。
小規模校は人的リソースの最適化と経営の安定化を、大規模校は教員管理と学生支援の仕組みづくりを進めることが、今後の安定運営につながると考えられます。
留意事項の推移 ― 教育課程の精度と組織体制の実効性が鍵に
全体を通して、最も多く指摘されたのは教育課程に関する事項でした。
第1回から第3回にかけて、「目標設定」「評価方法」「授業計画」など、教育設計と実施の整合性に関するコメントが増加しています。
特に第3回では、「ルーブリック評価や熟達度評価の導入」「Can-do表現の具体化」「教育課程情報の公表」「成績評価の透明性」など、教育の質を可視化し、説明責任を果たすための改善が求められました。
一方で、組織体制や研修体制に関する指摘は、第1回から第3回にかけて減少しており、体制整備が進んでいることがうかがえます。
ただし、「主任教員の負担軽減」「研修の体系化」「事務統括者の専門性強化」など、実効性や運用の継続性を問う内容は依然として多く、制度の理解から運用定着への移行段階にあるといえます。
以下の表は、令和6年度の第1〜3回における分野別の指摘件数をまとめたものです。
| 分野 | 第1回 | 第2回 | 第3回 |
|---|---|---|---|
| 教育課程 | 15件 | 15件 | 33件 |
| 組織体制 | 20件 | 11件 | 5件 |
| 学生支援 | 4件 | 2件 | 2件 |
| 広報・情報公開 | 12件 | 6件 | 17件 |
| その他 | 4件 | 2件 | 2件 |
表からも分かるように、教育課程に関する指摘は回を追うごとに増加しており、教育設計や評価体制の精度が今後の焦点となっています。
今後は、教育課程の質的向上と、それを支える実効性ある体制運用の両立が鍵となるでしょう。
まとめと今後の展望
今回の結果は、制度が「量から質」へと転換する節目を示しました。
形式的な整備だけではなく、教育の実践力や運営体制の持続性が問われ始めています。
次回以降の申請では、書類の完成度よりも、学校がどれだけ理念と実践を結びつけているかが焦点となるでしょう。
制度の理解を深め、現場の教育と組織運営を一体で磨くことこそ、今後の認定を勝ち取る鍵です。
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