— 経済的基盤の本質と、認定申請で求められる「説明力」—
日本語学校を新しく設立したいというご相談をいただく際、
最も多い質問のひとつは「どれくらい資金が必要ですか?」というものです。
一見すると、必要なのは校舎・内装・備品などの“初期投資”だと思われがちです。
しかし、認定申請の実務を踏まえると重要なのはむしろ
「開校してから軌道に乗るまでの赤字を乗り越えるための運転資金」です。
結論から言うと、校舎取得費を除いても、
安全に学校を運営していくための運転資金として 4,000万円程度を見込むのが現実的なラインです。
この記事では、
① なぜ運転資金がそれほど必要なのか
② 認定申請で何が審査されるのか
③ どのような書類が必要になるのか
を、できる限りわかりやすく解説します。
新規設立校には「資金計画の説明力」が求められる
認定制度では、学校が適切に運営されることが重要視されます。
そのため、新規設立校に対しては書類審査や面接の段階で、次のような点が確認されます。
- どのように学校を運営していくのか
- 開校前・開校後の資金繰りはどう設計されているのか
- 設置者が継続的に学校を支えられる体力を持っているか
つまり「学校を作れるか」だけでなく、
“学校を維持できるか” が問われるということです。
この段階で必要になるのが「資金計画の説明力」です。
そして、説明のポイントは 運転資金の確保 にあります。
2. 新規校は開校後すぐには生徒が入ってこない
日本語学校は一般的な事業と異なり、開校初年度から満員に近い学生が集まるわけではありません。
特に新規校は、実績や知名度がないため、初年度の学生数はどうしても限定的になります。
すると当然、
- 収入がない(または少ない)一方で
- 人件費や光熱費などの運営コストは発生する
という状態になります。
つまり、新規設立校は必ず赤字から始まるというのが前提です。
だからこそ、認定申請では
「この赤字をどのように補うのか」を示す必要があります。
なぜ赤字補填の説明が必要なのか?
— 認定申請では「設置者の経済的基盤」が厳格に審査されるため —
認定申請において、最も重要な審査項目のひとつが設置者の経済的基盤です。
これは、法第2条第3項第1号ロ(1)および「確認すべき事項」で次のように定義されています。
【引用】経済的基盤の審査基準(重要部分)
イ 設置者が当面(1年以上が望ましい)の運用資金を保有しており、債務超過ではないこと。
ロ 募集支援のために第三者へ支払う費用が過大ではないこと。
ハ 他事業との会計区分が明確であり、日本語教育機関の収益が適切に学校運営に充てられること。
つまり、開校後しばらくは赤字になることを前提に、その期間を乗り越えるだけの運転資金(1年以上分)があるか?
が問われます。
この基準に照らすと、校舎取得費とは別に運転資金で4,000万円程度を確保しておく方が安全というラインが見えてきます。
認定申請の書類では、経済的基盤を「数字で証明」する必要が
設置者の経済的基盤を証明するため、認定日本語教育機関では次の書類が求められます。
- 4-3(資産の状況:設置者)
- 4-4(資産の状況:学校)
- 4-5(負債の状況:設置者)
- 4-6(負債の状況:学校)
- 4-7(開校前年度/開校年度/翌年度の収支計画)
- (4)決算書・収支予算書
- (5)納税証明書
- (6)預貯金証明書
- (7)日本語教育課程以外の事業の概要(兼業時)
特に重要なのが、様式4-7(収支見込み)です。
ここで、
- 開校前の準備経費
- 開校後の人件費
- 家賃・光熱費
- 教材費
- 募集費用
- 翌年度の収支見込み
などを記載し、「収入が支出を下回る期間がある」ことを示します。
そのうえで、不足分をどのように調達するか(=運転資金の根拠)を説明しなければなりません。
だからこそ、新規設立校には「運転資金として4,000万円」が必要
開校前年度から翌年度までの3期間で見れば、多くの新規校は次のような収支構造になります。
- 開校前年度:収入ゼロ・準備人件費や備品購入で大きく赤字
- 開校年度:学生が増えず収入が限定的 → 赤字継続
- 翌年度:改善するが、軌道に乗るまで時間がかかる
これらを合計すると、運転資金4,000万円程度を確保しておくと、審査上も事業運営上も安全に進められるラインになります。
認定審査では「資金の総額」よりその資金が“持続性のある学校運営につながっているか”が重視されます。
おわりに:設立には「初期投資」よりも「継続力」が求められる
新規設立の相談ではどうしても、校舎・内装・設備の話に意識が向きがちです。
しかし、認定制度における本質はそこではなく、学校を安定して運営し続けるための基盤です。
設立を検討している方は、ぜひ「校舎取得費」と「運転資金」を切り離して考え、現実的な資金計画を立ててみてください。
もし、
- 設立費用の見積もり
- 様式4-7の作成
- 経済的基盤の説明方法
- 認定申請全体の流れの整理
などで不安があれば、ぜひご相談ください。
最初の段階で正しく設計しておくことが、認定取得の成功確率を大きく左右します。
日本語学校の設立を本格的に検討されている方へ
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