自民党の外国人政策提言から読み解く、日本語学校への影響と今後の方向性

2026年1月、自由民主党の外国人政策本部から、外国人政策に関する提言が示されました。

法改正や制度変更を直ちに伴うものではありませんが、外国人の受入れや在留管理をどのような考え方で整理していくのか、その「前提」を明確にした文書といえます。

留学制度の入口に位置する日本語学校にとっても無関係な内容ではありません。

本記事では、今回の提言の位置づけと大枠を整理した上で、日本語学校に影響しうるポイントと、そこから見えてくる今後の方向性について整理します。

目次

今回の外国人政策提言の位置づけ

2026年1月20日に示された今回の外国人政策提言は、法律改正や制度変更を直ちに決めるものではありません。自由民主党の外国人政策本部が、今後の外国人政策をどの方向で整理・運用していくべきかを示した「政策的な指針」と位置づけられます。

外国人の受入れ自体を否定する内容ではなく、制度趣旨に沿った利用や管理、説明責任を重視する考え方を明確にした点が特徴です。

今後の制度運用や審査の前提となる考え方を示した文書として、関係者が押さえておくべき位置づけといえます。

提言では、日本社会が直面している 人口減少・労働力不足 という構造的課題に対し、外国人材の受入れを「一時的な労働力確保」ではなく「社会の構成員としての共生」へ転換する必要性 を提言するものです。

単なる制度改正ではなく、制度・行政・教育・地域・企業を横断した包括的な外国人政策の再設計 を求めています。

今回の提言で示された外国人政策の大枠

自由民主党・外国人政策本部による今回の提言は、内容を整理すると概ね次の5つの柱に分けることができます。

① 外国人政策の司令塔機能の強化

  • 省庁横断で外国人政策を統括する体制の確立
  • 在留管理・労働・教育・社会保障を一体で設計

② 在留資格・受入制度の見直し

  • 短期・使い捨て型の制度からの脱却
  • キャリア形成・家族帯同・定住を見据えた制度設計
  • 技能実習制度等の課題整理と再構築

③ 教育・日本語教育の位置づけ強化

  • 日本語教育を「周辺施策」ではなく 社会基盤 として明確化
  • 教育の質・継続性・地域連携の強化
  • 学習から就労・定着への一貫支援

※ここは 日本語教育機関・認定制度と極めて親和性が高い論点 です。

④ 地域・企業での受入体制整備

  • 企業任せにしない生活支援・相談体制
  • 自治体・NPO・教育機関との連携
  • 地域コミュニティへの参加促進

⑤ 社会的理解と情報発信

  • 外国人受入れに対する国民理解の促進
  • 正確な情報発信と不安・誤解の是正

日本語学校に関係する主な論点

今回の提言は外国人政策全体を対象としたものであり、日本語学校を名指しで規制する内容ではありません。しかし、その中で示されている「在留資格の趣旨の徹底」「受入れ側の管理責任」「日本社会への統合を前提とした在留」という考え方は、留学の入口に位置する日本語学校とも密接に関係します。

特に、不法滞在や制度悪用への対応、在留管理の適正化、日本のルール理解を重視する姿勢は、今後の入管対応や認定審査の前提として無視できない要素です。

以下では、自由民主党の提言のうち、日本語学校の運営や審査実務に影響しうるポイントに絞って、具体的に整理していきます。

1.在留管理は「事後対応」から「入口管理」へ

提言では、出入国・在留管理について入国後の問題対応ではなく、入国前・在留初期段階での管理強化が繰り返し示されています。

  • JESTA(事前審査システム)を活用した入国前チェック
  • 在留資格の趣旨に照らした事前選別
  • 不法滞在・不法就労の未然防止

これは留学分野においても、「在留資格が出た後に学校が対応する」のではなく、そもそも受け入れてよい留学生かどうかを入口で判断するという考え方が前提になっていることを意味します。

2.「制度趣旨に沿った留学かどうか」を重視

提言では、在留資格全般について制度趣旨から逸脱した利用の排除が強く意識されています。

留学に関して想定されている視点は、

  • 学習目的が明確か
  • 修学の実態があるか
  • 就労目的の隠れ蓑になっていないか

といった点です。

今回の提言で特徴的なのは、これらの点が学生個人の問題としてではなく、受入機関側の管理責任として明確に整理されている点です。

日本語学校は「教育機関」であると同時に、留学制度の適正な運用を担う主体であることが、あらためて強調されています。

この流れを踏まえると、今後は資格外活動を含め、制度趣旨から逸脱する運用に対して、より厳格な制限や確認が行われる可能性も想定されます。

3.在留管理DXと「把握できていること」が前提になる

提言では、在留カード、マイナンバー、各種行政情報を連携させることで、

  • 在留状況
  • 就労・資格外活動
  • 社会保険・税情報

などを横断的に把握する仕組みを構築する方針が示されています。

これは、日本語学校の現場に置き換えると、

  • 学生の在籍状況
  • 学習状況
  • 進路・資格外活動の把握

について、「聞かれたら答える」ではなく「把握していること」が前提になる流れと読み取れます。

4.日本語能力・日本社会理解を在留の前提に

また、外国人の受入れにあたり、

  • 日本語能力
  • 日本のルール・文化・社会理解

を重視する姿勢が明確に示されています。

これは、日本語教育を「補助的な支援」ではなく、外国人政策全体の基盤として位置づけていることを意味します。

日本語学校は今後、単に日本語を教える場ではなく、日本で生活し、学び、進路を選択する前提を整える場として見られていくことになります。

5.不法滞在・不法就労対策の文脈に留学が含まれている

提言では、不法滞在・不法就労対策が大きな柱として扱われています。
その中で、入口段階での管理不足が問題視されており、留学制度も例外として扱われていません。

これは、「問題が起きた学校だけが対象になる」のではなく、制度全体として、留学の入口が厳しく見直されるという整理です。

今回の提言から見えてくる、日本語学校業界の今後

今回の政策提言を踏まえると、日本語学校を取り巻く環境について、次のような方向性が見えてきます。

第一に、日本語学校における留学生の管理は、これまで以上に厳格化することが見込まれます

すでに入管対応や適正校制度を通じて管理強化は進んできましたが、今回の提言では「入口管理」「事前把握」がより重視されており、学校側が学生の状況をどこまで把握・説明できているかが、今後さらに問われることになります。

第二に、認定制度の開始と相まって、都度対応・属人的対応に依存している体制の弱い学校は、徐々に淘汰されていく可能性が高まります

第三に、今後は個々の担当者の努力ではなく、学校という組織全体として「仕組みを設計する力」「リスクを事前に見極める力」が問われる局面に入ると考えられます。

学生募集、教育課程、生活支援、進路設計が一体として整理されているかどうかが、学校評価の前提になっていきます。

第四に、適正校の枠組み自体は今後も大きく変わらず継続される見込みであるため、管理の厳格化に応じて実態としては許可率がさらに厳しくなる学校が続出する可能性があります

その結果、エージェントや送り出し機関の視点から見たときの「学校間の格差」は、これまで以上に広がっていくことが予想されます。

認定制度も見据えた、学校運営の整理ポイント

今回の提言が示している「入口管理」や「事前把握」を、日本語学校の実務に引き寄せて考えると、次のような点が問われていくと考えられます。

たとえば、

  • 入学後にトラブルになりやすい学生の傾向を、国籍、入学経路、目的、来日前の情報などから定期的に振り返れているか
  • 学生指導について、「誰が」「どの段階で」「何を判断し」「どう対応するのか」というプロセスが学内で言語化され、共有されているか
  • その内容が、学則や内部ルールとして整理され、個人の経験や感覚に依存しない形になっているか

こうした整理は、日常的な問題在籍者の発生を抑えることにつながるだけでなく、制度運用が厳格化した場合にも影響を受けにくい体制をつくることになります。

また、これらは結果的に、認定申請において求められる「体制の一貫性」や「説明可能性」を整えることにも直結します。

まとめ

認定制度の開始も含め、日本語学校を取り巻く制度環境は、少しずつですが確実に変わり始めています。
日々の運営を見直す中で、どこが強みで、どこが属人的になっているのか。そうした整理を進めていくこと自体が、これからの学校経営における重要な準備になるはずです。

今示されている前提を踏まえて、自校の運営を一度整理してみることが、今後のリスク低減につながります。

今回の提言を受けて、学校運営や体制について考える中で、判断に迷う点があれば、個別のご相談も承っています。

まずはお気軽にご相談ください

初回ヒアリングは無料。契約を前提としない情報交換からでも大歓迎です。

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