留学生の受け入れコストや入国の手続きが、近い将来大きく変わるかもしれません。
3月10日、入管法の改正案が国会に提出されました。今回の改正案には、電子渡航認証制度「JESTA」の創設と、在留許可手数料の上限引上げという2つの柱が含まれています。特に手数料の引上げは、学生本人の負担増だけでなく、学校側の募集活動や事務フローにも影響が及ぶ可能性があります。
「うちの学校にはどう関係するの?」「今から何か準備しておくべき?」——そう感じた方も多いのではないでしょうか。まだ法案段階のため確定事項ではありませんが、今のうちに押さえておきたいポイントを整理します。
改正案の背景 ― なぜ今、この改正なのか
今回の改正案の根底にあるのは、外国人の急増という構造的な変化です。令和7年の新規入国者数は過去最高の約3,918万人、在留外国人数も過去最高の約413万人を記録しました。
法案の提出理由には「厳格な出入国管理を実現し、併せて上陸審査の手続の一層の円滑化を図る」と記されています。
改正案の全文や概要資料は、出入国在留管理庁の発表ページからご確認いただけます。
注目すべきは、「厳格化」が先に掲げられている点です。入国の入口を厳しくし、在留中の管理コストは外国人自身にも応益負担してもらう――これが、改正案全体を貫く基本的な考え方です。
直近の資格外活動に関する厳格化の動きや、在籍管理に対する入管の姿勢の変化とも一貫した方向性であり、個別の制度変更ではなく、包括的な政策転換の一環として理解することが重要です。
JESTA(電子渡航認証制度)とは ― 留学生への直接影響は限定的
改正案の1つ目の柱が、JESTA(Japan Electronic System for Travel Authorization)の創設です。これは、査証(ビザ)が免除されている短期滞在の外国人に対し、入国前に電子的な認証を求める制度で、米国のESTAに相当するものです。
対象となるのは、観光等を目的とする査証免除対象者、クルーズ船の乗客、乗継ぎで一時的に入国する外国人などです。留学ビザで来日する学生には直接適用されないため、日本語教育機関への影響は限定的です。
ただし、査証免除で短期滞在し、日本語学校の短期プログラムに参加するケース(欧米圏の学生に多い形態)では、JESTAの認証取得と手数料の負担が新たに生じます。短期コースを運営している学校は、入学案内での説明追加が将来的に必要になる可能性があります。なお、JESTAの施行時期は令和11年3月31日までの間で政令により定められます。
在留許可手数料の引上げ ― 学校運営への影響が大きいポイント
日本語教育機関にとってより注目すべきは、2つ目の柱である在留許可手数料の上限額の大幅な引上げです。
上限額の変更
改正案では、入管法上の手数料の上限額が以下のとおり引き上げられます。
- 在留資格の変更許可:現行1万円 → 改正後10万円
- 在留期間の更新許可:現行1万円 → 改正後10万円
- 永住許可:現行1万円 → 改正後30万円
重要な点として、これはあくまで「上限額」の引上げであり、実際の手数料額は政令で定められるため、現時点では確定していません。現行の実際の手数料は、変更・更新許可が6,000円(窓口)、永住許可が1万円です。また、在留期間に応じて金額を設定する方針も示されています。
留学生への影響
在留資格の変更(例:留学→特定技能・技術人文知識国際業務など)や在留期間の更新にかかる手数料が上がれば、留学生にとって日本に滞在するトータルコストが上昇します。特に価格感度の高い市場(東南アジア・南アジアなど)からの学生募集においては、競合国との比較で不利になる可能性も考えられます。
なお、経済的困難その他特別の理由がある者については、手数料の減額または免除の規定が設けられています。ただし、永住許可の減免対象は日本人・永住者・特別永住者の配偶者又は子等に限定されており、留学生が卒業後に永住を目指す場合は対象外となる見込みです。
日本語教育機関として今後注視すべきこと
現時点で学校側に求められる具体的なアクションはありませんが、以下の点を念頭に置いておくことをお勧めします。
費用説明の透明性の確保:手数料が引き上げられた場合、入学前の費用説明において、学費だけでなく在留手続きにかかる費用も含めたトータルコストの提示がより重要になります。送り出し機関やエージェントへの情報提供も見直しが必要になるかもしれません。
政令の動向の注視:手数料に関する改正規定の施行は令和9年3月31日までの間で政令により定められます。具体的な手数料額が確定するタイミングで、改めて対応を検討する必要があります。
最新の動向については出入国在留管理庁の発表ページをご確認ください。
入管政策全体の方向性の理解:資格外活動の厳格化、在籍管理への入管の姿勢の変化、そして今回の法改正。これらはいずれも「外国人の出入国及び在留の公正な管理」の強化という一貫した方向性の中にあります。個々の制度変更に個別対応するだけでなく、全体の流れを理解した上で学校運営の方針を考えることが大切です。
まとめ
入管法改正案は法案段階であり、成立・施行は未確定です。
しかし、「出入国管理の厳格化」と「在留外国人への応益負担」という方向性は明確に示されています。
日本語教育機関としては、今後の政令の内容を注視しつつ、留学生への費用説明の準備や、入管政策全体の動向を踏まえた学校運営の見直しを進めていくことが求められます。
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